ICLは近視・乱視を矯正する手術で、老眼そのものは治りません。老眼が始まる40代以降は、老視用ICL(EVO Viva)・モノビジョン・多焦点眼内レンズといった選択肢を、年齢と目の状態で選び分けます。誤解の原因と選び方を中立に整理します。
この記事でわかること
- 通常のICLは近視・乱視の矯正で、老眼(加齢による調節力の低下)は治らない
- ICLを受けても老眼は年齢相応に進むため、40代以降は老眼対策を別に考える
- 老眼世代の選択肢は老視用ICL(EVO Viva)・モノビジョン・多焦点眼内レンズの3系統
- 老視用ICLは日本では未承認(CEマーク取得・2026年7月時点)で、費用も通常ICLより高い
- 選び方は「今の年齢」と「老眼が始まっているか」を起点に考えると整理しやすい
公的情報源: 日本眼科学会「屈折矯正手術のガイドライン」(参照)/厚生労働省 医療機器の承認情報(参照)/各クリニックの公表料金(2026年7月時点)
ICLで老眼は治る?結論と、近視矯正・老眼の関係
先に結論です。通常のICLは近視・乱視を矯正する手術で、老眼そのものは治りません。ICLを受けても、老眼は年齢とともに進みます。
老眼とは、加齢で水晶体の調節力が落ち、近くにピントが合いにくくなる目の変化です。多くは40歳前後から自覚し始めます。
ICL(眼内コンタクトレンズ)とは、レンズを眼内に挿入して近視や乱視を矯正する手術のこと。角膜を削るレーシックと違い、水晶体を残したままレンズを追加する点が特徴です。
つまり、ICLが働きかけるのは「ピントの位置(近視・乱視)」であって、「ピントを合わせる力(調節力)」ではありません。老眼は調節力の問題なので、近視用のICLでは老眼は矯正できないというのが出発点になります。
まず押さえたい3つの事実
- 通常ICL=近視・乱視の矯正:遠くを見やすくする手術で、老眼を治す手術ではありません
- ICL後も老眼は来る:40代以降は手元が見えにくくなり、老眼鏡が必要になることがあります
- 老眼世代には別の選択肢がある:老視用ICL・モノビジョン・多焦点眼内レンズを検討します
ICLの費用相場や適応条件そのものは、ICLの費用と適応条件で整理しています。老眼治療全体の比較は、老眼治療の選択肢比較もあわせてご覧ください。
「ICLで老眼になる・治る」の誤解はなぜ起きる?近視と老眼の違い
先に結論です。誤解の多くは、「近視(ピントの位置)」と「老眼(ピントを合わせる力)」を同じものと考えてしまうことから生まれます。
「ICLで近視が治るなら、老眼も治るはず」「ICLをすると老眼が早まる/老眼にならない」という声を、術前の相談でよく耳にしました。どちらも、近視と老眼のしくみの違いを整理すると解けます。
近視と老眼は別のしくみ
- 近視・乱視:目に入る光の焦点が、網膜より手前や乱れた位置で結ぶ状態。ICLで焦点の位置を補正できます
- 老眼:水晶体が硬くなり、ピントを近くに合わせる調節力が落ちる加齢変化。ICLでは補えません
ICLは水晶体を温存する手術です。水晶体そのものの硬化(老眼の原因)には関与しないため、ICLで老眼が早まることも、老眼が防げることも基本的にありません。老眼は誰にでも年齢相応に訪れます。
ここを取り違えると、「近視のICLをしたのに数年後に手元が見えなくなった=失敗」と感じてしまいます。実際は老眼という別の変化が加わっただけで、ICLの効果とは切り分けて考える必要があります。

老眼世代のICL・視力矯正の選択肢4つ
先に結論です。老眼が始まっている、または近い将来を見据える世代の選択肢は、「通常ICL・老視用ICL・モノビジョン・多焦点眼内レンズ」の4つに整理できます。
同じ「近くも遠くも見たい」でも、年齢や目の状態で向く方法が変わります。まずは4つの位置づけを押さえます。

4つの選択肢の位置づけ
| 選択肢 | 何をする | 向きやすい人 | 費用の目安(両眼・2026年7月時点) |
|---|---|---|---|
| 通常ICL | 近視・乱視を矯正(老眼は別) | 老眼がまだ軽い40代前半まで | 約45万〜75万円(各院公式) |
| 老視用ICL(EVO Viva) | 近視+老眼を同時に矯正(EDOF) | 近視があり老眼鏡を減らしたい人 | 約88万円前後(各院公式・未承認) |
| モノビジョン | 片眼を遠く・片眼を近く寄りに | 脳の順応ができる一部の人 | 通常ICLに準じる(各院公式) |
| 多焦点眼内レンズ | 水晶体を除去し多焦点IOLに交換 | 白内障を併発する世代 | 選定療養/自由診療(別途) |
※費用・適応はプラン・度数・目の状態で変わります。正確な金額と適応は各クリニックの公式情報と適応検査でご確認ください。
表のとおり、老眼世代は「通常ICLだけが選択肢ではない」という点が重要です。特に多焦点眼内レンズは白内障手術と一体で行うため、ICLとは前提が異なります。多焦点眼内レンズの費用はICLの費用と適応条件や老眼治療の比較記事とあわせて確認すると、総額の見通しが立てやすくなります。
老視用ICL(EVO Viva・EDOF)とは?効果・費用・承認状況
先に結論です。老視用ICLは、焦点深度を広げるEDOFという設計で近くも見えやすくするレンズですが、日本では未承認(CEマーク取得・2026年7月時点)である点を必ず押さえます。
EVO Viva ICLに代表される老視用ICLは、EDOF(焦点深度拡張型)という技術を使い、遠方から中間・近方まで比較的広い範囲でピントが合うよう設計されています。近視と老眼を同時に矯正できるのが特徴です。
効果・費用・注意点の目安
- 効果:近視があり老眼も気になる人が、老眼鏡への依存を減らせる可能性があります
- 費用:両眼で約88万円前後(例:中京眼科は片眼44万円・両眼88万円税込/検査費用別途・2026年7月時点の同院公表)と、通常ICLより高めです
- 承認状況:ヨーロッパではCEマークを取得。日本の厚生労働省・米国FDAは未承認で、近視用ICLより臨床実績の蓄積期間が短いとされます
- デメリット:夜間の光のにじみ(ハロー・グレア)が通常ICLより出やすい、乱視矯正に制約がある、適応外となる目の状態もあります
老視用ICLは、「老眼が完全に治る手術」ではなく「見え方を調整して不便を減らす選択肢」と捉えるのが現実的です。未承認レンズを扱うかどうか、症例経験、保証条件はクリニックによって差があるため、複数院の公表情報を比べると判断しやすくなります。
クリニックごとの費用や保証の読み解き方は、ICLの評判で選ぶクリニック比較で整理しています。
年齢別に見る老眼とICLの考え方
先に結論です。老眼とICLは、「今の年齢」と「老眼が始まっているか」を起点に考えると、選択肢を絞りやすくなります。
年代で目の状態が変わるため、同じ「視力矯正をしたい」でも判断が分かれます。あくまで一般的な目安として、年代ごとの考え方を整理します。

年代別の考え方の目安
- 30代〜40代前半(老眼が軽い〜未発):通常ICLで近視・乱視を矯正できます。ただし数年後に老眼が進むと手元は老眼鏡が必要になる可能性を理解しておきます
- 40代後半〜50代(老眼を自覚):近視もあるなら老視用ICLやモノビジョンを検討。ただし未承認・順応の個人差というリスクも踏まえます
- 60代前後〜(白内障を併発しやすい):水晶体自体の濁りが出る世代では、多焦点眼内レンズ(白内障手術)が選択肢の中心になります
大切なのは、近視の矯正(ICL)と老眼の対策を、別々に、しかし同時に考えることです。40代前半で通常ICLを選ぶ場合も、将来の老眼をどう補うか(老眼鏡・将来の手術)を医師と相談しておくと、後から慌てずにすみます。
最終的な適応は、年齢だけでなく角膜や水晶体の状態、度数によって変わります。年齢はあくまで入り口で、判断は適応検査を受けてからになります。
ICLと多焦点眼内レンズの違い|水晶体を残すか除去するか
先に結論です。ICLと多焦点眼内レンズの最大の違いは、自分の水晶体を「残す」か「除去して人工レンズに換える」かという点にあります。
老眼対策として名前が挙がる両者ですが、手術の前提がまったく異なります。混同したまま比べると判断を誤ります。

2つの手術の前提の違い
- ICL(老視用ICLを含む):水晶体を温存し、その前にレンズを追加します。取り出して元に戻せる可逆性が特徴で、残っている調節力も活かせます
- 多焦点眼内レンズ:主に白内障手術で、濁った水晶体を除去して多焦点の人工レンズに交換します。老眼と白内障をまとめて対応できますが、水晶体は戻せません
つまり、老眼だけで白内障がない世代はICL系、白内障を併発する世代は多焦点眼内レンズが検討の中心になりやすい、という整理ができます。どちらも効果や見え方には個人差があり、ハロー・グレアなどの見え方の変化も起こり得ます。
なお、多焦点眼内レンズは白内障手術の一部として選定療養や自由診療の区分が関わり、費用の考え方もICLとは別です。レーシックも含めた老眼治療全体の比較は、老眼治療の選択肢比較で確認できます。
よくある質問(FAQ)
Q1:ICLで老眼は治りますか?
通常のICLは近視・乱視を矯正する手術で、老眼そのものは治りません。老眼は水晶体の調節力が落ちる加齢変化で、水晶体を温存するICLでは補えないためです。老眼も同時に矯正したい場合は、EDOF設計の老視用ICL(EVO Viva)や多焦点眼内レンズが選択肢になりますが、適応は目の状態と年齢によります。
Q2:ICLをすると老眼が早まる、または老眼にならないというのは本当ですか?
どちらも正確ではありません。ICLは水晶体を温存する手術のため、老眼が早まることも、老眼を防ぐこともありません。老眼は年齢相応に誰にでも進みます。ICLで近視が矯正されたあと、40代以降に手元が見えにくくなるのは、ICLの効果とは別の老眼という変化が加わったためです。
Q3:老視用ICL(EVO Viva)は日本で受けられますか?費用はいくらですか?
一部のクリニックで扱われていますが、老視用ICLは日本の厚生労働省では未承認(CEマーク取得・2026年7月時点)です。費用は両眼で約88万円前後(各院公式)と通常ICLより高めで、検査費が別途かかることもあります。未承認レンズであること、ハロー・グレアや適応の個人差を理解したうえで、複数院の公表情報を比べて検討してください。
Q4:40代前半で近視のICLを受けても大丈夫ですか?
老眼がまだ軽い40代前半であれば、通常ICLで近視・乱視を矯正する選択はあり得ます。ただし数年後に老眼が進み、手元は老眼鏡が必要になる可能性を理解しておくことが大切です。将来の老眼をどう補うかを事前に医師と相談し、適応検査で目の状態を確認したうえで判断してください。
Q5:ICLと多焦点眼内レンズはどちらが老眼に向いていますか?
目の状態と年齢によります。白内障がない世代はICL系(老視用ICLなど)、白内障を併発する世代は多焦点眼内レンズが中心になりやすい整理です。ICLは水晶体を残す可逆的な手術、多焦点眼内レンズは水晶体を除去して交換する手術で前提が異なります。効果・見え方には個人差があり、適応判断は眼科医の診察が必要です。
まとめ|ICLと老眼の関係を正しく理解して選ぶ
- 通常のICLは近視・乱視の矯正で、老眼そのものは治らない
- ICL後も老眼は年齢相応に進むため、40代以降は老眼対策を別に考える
- 老眼世代の選択肢は老視用ICL(EVO Viva)・モノビジョン・多焦点眼内レンズ
- 老視用ICLは日本では未承認(CEマーク取得・2026年7月時点)で費用も高め
- 選び方は「今の年齢」と「老眼が始まっているか」を起点に整理する
ICLと老眼は、近視の矯正と、老眼への対策を別々に、しかし同時に考えることで整理できます。「ICLで老眼も治る」という単純な話ではなく、年齢と目の状態に応じて選択肢を選び分けるのが現実的です。
まずは自分の年齢と老眼の有無を確認し、通常ICL・老視用ICL・多焦点眼内レンズの前提の違いを押さえる。そのうえで、適応検査で自分の目の状態と費用感を確かめる。この順番が、後悔しにくい進め方です。手術の適応判断は、必ず眼科医の診察・適応検査を受けたうえで決めてください。
免責事項
※本記事は一般的な情報を整理した参考情報であり、診断・治療方針の判断は必ず眼科医にご相談ください。記載の費用・承認状況・適応は2026年7月時点の公開情報を参考にしており、最新条件は各クリニック公式サイトや公的機関の情報でご確認ください。ICLや老視用ICL、多焦点眼内レンズは効果・術後経過に個人差があり、老視用ICLは日本国内で未承認です。

