強度近視のICLは、レーシックが適応外になる強い度数(おおむね-10Dを超える近視)でも、角膜を削らずレンズで矯正できる選択肢です。ただしICLが矯正するのは屈折だけで、伸びた眼軸長や網膜剥離・緑内障などのリスクは残るため、術前検査と術後の眼底フォローが判断の軸になります。
この記事でわかること
- 強度近視は球面度数-6.0D超、または眼軸長26.5mm以上が目安(各院公表・2026年7月時点)
- レーシックは-10D超で適応外になりやすく、角膜を削らないICLが強度近視の選択肢になる
- ICLは屈折を矯正するだけで、伸びた眼軸長や眼底の状態は変わらない=網膜剥離・緑内障などのリスクは残る
- 強度近視の術前検査では眼底・網膜周辺部・緑内障・前房深度が特に重視される
- 費用は両眼おおむね45万〜75万円台(各院公式・2026年7月時点)。ICLは国税庁が対象と明示した記載がないため税務署で要確認
公的情報源: 日本眼科学会「屈折矯正手術のガイドライン」(参照)/日本眼科学会「目の病気 近視」(参照)/国税庁 タックスアンサー No.1122「医療費控除の対象となる医療費」Q3「眼科医に支払う治療費等」(参照・令和7年4月1日現在法令等)
強度近視のICLは何を矯正し、何は矯正しないのか
先に結論です。強度近視のICLは、レーシックで対応しきれない強い近視を矯正できる一方で、近視という体質そのものを治すわけではない点を先に押さえておくと判断を誤りません。
強度近視とは、球面度数が-6.0Dを超える、または眼軸長が26.5mm以上に伸びた近視の状態です(各院公表・2026年7月時点)。眼球が前後に長く伸び、網膜や視神経に負担がかかりやすくなります。
ICL(眼内コンタクトレンズ)は、眼の中にレンズを挿入して近視や乱視を矯正する手術です。角膜を削るレーシックと違い、レンズを取り出せば元に戻せる可逆性が特徴とされます。
ここで大切なのは、ICLが変えるのは「光の屈折」だけという点です。手術で見え方は矯正できても、伸びてしまった眼軸長や、それに伴う眼底の状態は変わりません。
術前説明の現場でも、「手術すれば強度近視が治る」と受け取っている方は少なくありませんでした。実際には、矯正と、近視という病態のフォローは別の話です。
「矯正できること」と「変わらないこと」を分ける
- 矯正できること:ピント(屈折)のズレ。強い近視・乱視でも度数の範囲内なら矯正の対象になる
- 変わらないこと:伸びた眼軸長そのもの、網膜・脈絡膜・視神経にかかる負担、将来の眼底疾患のリスク
つまり強度近視の方は、ICLで見え方を整えたあとも、定期的な眼底検査を続ける前提で考えるのが現実的です。この視点は、費用や度数の話に入る前に持っておきたい土台になります。
ICLの費用相場や適応条件そのものはICLの費用と適応条件で、レーシックと迷う場合はレーシックとICLはどっちを選ぶかで整理しています。
強度近視でレーシックが適応外になり、ICLが選択肢になる理由
先に結論です。強度近視でレーシックが難しくなるのは、矯正のために削る角膜の量が増えすぎて、安全に残せる厚みを確保できなくなるからです。角膜を削らないICLは、この制約を受けにくいのが選ばれる理由です。
強度近視の方が視力回復手術を検討する順番は、次のように整理できます。

日本眼科学会「屈折矯正手術のガイドライン」(2019年改訂)では、角膜を削るレーシックについて、強度近視(-10Dを超える近視)は推奨されない範囲とされています(参照:日本眼科学会 屈折矯正手術のガイドライン)。度数が強いほど削る量が増え、角膜が薄くなりすぎるリスクがあるためです。
レーシックとICLの対応範囲の目安(各院公表・2026年7月時点)
レーシックとICLの違いを、強度近視という条件で並べてみます。

| 比較項目 | レーシック | ICL(眼内コンタクトレンズ) |
|---|---|---|
| 矯正の方法 | 角膜をレーザーで削る | 眼内にレンズを挿入する |
| 対応する近視度数の目安 | おおむね-10Dまで | おおむね-3D〜-18D(-15D以上は慎重) |
| 強度近視への対応 | -10D超は適応外になりやすい | 度数の範囲内なら対応しやすい |
| 角膜の厚みへの依存 | 大きい(薄いと不可) | 小さい |
| 可逆性 | 元に戻せない | レンズを取り出せば戻せるとされる |
※対応度数は各院・レンズ種類で異なり、上記は公表情報をもとにした2026年7月時点の目安です。適応可否は必ず眼科医の適応検査で判断されます。
表のとおり、角膜を削らないICLは、角膜の厚みや強い度数の制約を受けにくいのが強度近視で選ばれる背景です。ただし「度数が強くても必ず受けられる」という意味ではなく、-15Dを超える強い度数では慎重な適応判断が必要になります。
レーシックも含めた適応外の全体像と代替案は、ICLが適応外になる条件と代替案でまとめています。
強度近視に伴う眼底・合併症のリスク
先に結論です。強度近視で最も注意したいのは、屈折の矯正では防げない眼底の合併症です。ICLを受けても受けなくても、強度近視である以上、これらのリスクは残ります。
強度近視で高まる目のリスクは、大きく網膜・黄斑・視神経の3つの部位に分けて整理できます。

眼球が前後に伸びることで、網膜や脈絡膜、視神経といった組織が薄く引き伸ばされ、さまざまな変化が起こりやすくなります。網膜がはがれる網膜剥離やその前段階の網膜分離は、強度近視の方の一部にみられると報告されています。
部位別に見る主なリスク
- 網膜:網膜剥離・網膜分離。網膜が引き伸ばされて裂けたり、はがれたりする
- 黄斑(ものを見る中心):近視性脈絡膜新生血管や近視性牽引黄斑症。出血や網膜のむくみで中心の視力が落ちる
- 視神経:緑内障・近視性視神経症。近視のある人は緑内障の発症リスクが高まると報告されている
これらは強度近視という体質に由来するもので、ICLの手術とは直接関係がありません。むしろ、ICLの適応検査で眼底を詳しく調べる過程で、こうした変化が早く見つかることもあります。
だからこそ、強度近視の方は「矯正したら終わり」ではなく、術後も含めて定期的な眼底検査を生涯続けることが、視力を守るうえで欠かせません。手術を受けるかどうかにかかわらず、見え方の急な変化(視野の一部が欠ける・ゆがむ・急な飛蚊症)があれば、早めの受診が必要です。
強度近視のICL術前検査で特に重視される項目
先に結論です。強度近視のICLでは、通常の視力・度数の測定に加えて、眼底と緑内障、そしてレンズを入れる眼内スペースの検査が特に重視されます。
強度近視のICLでは、通常の適応検査に加えて次の項目が特に重視されます。

一般的な適応検査(視力・屈折度数・角膜形状など)は、レーシックでもICLでも共通です。ただし強度近視の場合は、眼底の状態とレンズを収める前房の広さが、適応の可否と安全性を大きく左右します。
強度近視で重視される検査と、その理由
| 検査項目 | 何を見るか | 強度近視で重要な理由 |
|---|---|---|
| 眼軸長測定 | 眼球の前後の長さ | 度数だけでなく病的近視の進行度の目安になる |
| 散瞳での眼底・網膜周辺部検査 | 網膜のはがれ・裂け・変性 | 網膜剥離の予兆を術前に把握するため |
| 緑内障検査(眼圧・OCT・視野) | 視神経・視野の状態 | 近視で高まる緑内障を見落とさないため |
| 前房深度(ACD)測定 | レンズを入れる空間の広さ | 前房が浅いとICLを入れにくい |
| 角膜内皮細胞数 | 角膜内側の細胞の数 | 少ないと術後の角膜への負担が問題になる |
※検査項目・基準はクリニックや使用レンズで異なります。上記は一般的な考え方の整理です。
適応検査は「手術できるか」の判定であると同時に、隠れた眼底疾患を見つける機会でもあります。強度近視の方ほど、この検査の丁寧さが重要になります。
強度近視でもICLに慎重になる・受けられないケース
先に結論です。強度近視だからICLが必ず受けられるわけではなく、眼底や緑内障、眼内スペースの状態によっては適応外や慎重判断になります。
強度近視は、レーシックが難しい人にとってICLの後押しになる条件です。一方で、強度近視ゆえに別の適応外要因が見つかることもあります。
- 進行中の眼底疾患がある:網膜剥離・近視性脈絡膜新生血管などの治療・経過観察が優先される場合
- 緑内障が進んでいる:視野障害の程度によっては矯正より疾患管理が先になる
- 前房が浅い・角膜内皮細胞が少ない:レンズを安全に入れる条件を満たしにくい
- 度数が-15Dを大きく超える:対応レンズの範囲を超え、慎重な適応判断が必要
こうしたケースでは、手術を急ぐより、まず眼の状態を整える・経過を見る判断が優先されます。強度近視の方にとって、「受けられない」という結果も、目を守るうえでは意味のある情報です。
- 強度近視でレーシックが適応外だった:角膜を削らないICLが選択肢になりやすい
- 眼底・緑内障の検査で大きな問題がなかった:適応の土台が整っている
- 術後も定期的な眼底検査を続ける前提を理解している:矯正と疾患フォローを分けて考えられる
最終的な適応は、必ず眼科医の適応検査で自分の目の状態を確認したうえで判断されます。
強度近視のICL費用の目安と考え方
先に結論です。強度近視のICL費用は、両眼でおおむね45万〜75万円台(各院公式・2026年7月時点)が目安で、強い度数や乱視用レンズでは上振れしやすい点を見込んでおきます。
ICLは自由診療が中心で、費用はレンズの種類や度数、乱視の有無で変わります。強度近視や強い乱視では、対応レンズ(乱視用のトーリックICL等)が必要になり、標準的な費用より高くなることがあります。
総額で見るときのポイント
- レンズ代の差:強い度数・乱視用レンズは費用が上がりやすい
- 追加費用:適応検査費・術後検診の扱いが院で異なる
- 総額比較:月額や最低価格でなく、検査から術後検診までの総額で比べる
なお、ICLは、国税庁が名指しで医療費控除の対象と示した記載がありません(明示があるのはレーシック手術とオルソケラトロジー・国税庁タックスアンサー No.1122「医療費控除の対象となる医療費」Q3「眼科医に支払う治療費等」・令和7年4月1日現在法令等)。対象かどうかは「医師による診療または治療の対価」にあたるかで判断されるため(所得税法第73条第2項)、個別の可否は最寄りの税務署にご確認ください。総額を見積もるときは、この点も踏まえると見通しが立てやすくなります(参照:国税庁 タックスアンサー No.1122 Q3「眼科医に支払う治療費等」)。
費用の内訳や医療費控除の考え方はICLの費用と適応条件で、クリニックの比較はICLの評判で選ぶクリニック比較で確認できます。
よくある質問(FAQ)
Q1:強度近視でもICL手術は受けられますか?
強度近視は、レーシックが適応外になりやすい強い度数でも角膜を削らずに矯正できるICLの対象になりやすい条件です。ただし度数の範囲(おおむね-3D〜-18D、-15D以上は慎重)や眼底・緑内障の状態によっては適応外になることもあります。受けられるかどうかは、必ず眼科医の適応検査で判断されます。
Q2:ICLを受ければ強度近視は治りますか?
ICLが矯正するのは光の屈折(ピント)だけで、伸びた眼軸長や眼底の状態は変わりません。見え方は矯正できても、強度近視に伴う網膜剥離や緑内障などのリスクは残ります。「治る」ではなく「矯正したうえで、近視という病態のフォローを続ける」と捉えるのが正確です。
Q3:強度近視のICL手術後に注意することは何ですか?
強度近視の方は、術後も定期的な眼底検査を続けることが大切です。ICLとは関係なく、網膜剥離や黄斑の変化は強度近視である限り起こり得ます。視野の一部が欠ける・ものがゆがむ・急に飛蚊症が増えたといった変化があれば、早めに眼科を受診してください。
Q4:強度近視のICL手術の費用はどれくらいですか?
強度近視のICL費用は、両眼でおおむね45万〜75万円台(各院公式・2026年7月時点)が目安です。強い度数や乱視用レンズ(トーリックICL)では費用が上振れしやすくなります。ICLは、国税庁が名指しで医療費控除の対象と示した記載がありません(明示があるのはレーシック手術とオルソケラトロジー・国税庁タックスアンサー No.1122「医療費控除の対象となる医療費」Q3「眼科医に支払う治療費等」・令和7年4月1日現在法令等)。対象かどうかは「医師による診療または治療の対価」にあたるかで判断されるため(所得税法第73条第2項)、個別の可否は最寄りの税務署にご確認ください。最低価格でなく総額で比べます。
Q5:強度近視の術前検査では何を調べますか?
視力・度数・角膜形状などの一般的な適応検査に加えて、眼軸長・散瞳での眼底/網膜周辺部・緑内障(眼圧・OCT・視野)・前房深度・角膜内皮細胞が特に重視されます。強度近視では眼底疾患のリスクが高く、レンズを入れる眼内スペースの評価も欠かせないためです。
まとめ|強度近視のICLは「矯正」と「眼底フォロー」を分けて考える
- 強度近視は球面度数-6.0D超・眼軸長26.5mm以上が目安(各院公表・2026年7月時点)
- レーシックは-10D超で適応外になりやすく、角膜を削らないICLが選択肢になる
- ICLは屈折の矯正のみで、網膜剥離・緑内障などの眼底リスクは残る
- 術前検査では眼底・緑内障・前房深度が特に重視される
- 費用は両眼45万〜75万円台が目安。医療費控除はICLを名指しした国税庁の記載がないため税務署で要確認
強度近視のICLは、レーシックが難しい強い度数でも角膜を削らずに矯正できる、有力な選択肢です。ただし、ICLが矯正するのは屈折だけで、伸びた眼軸長や眼底のリスクまでは変えられません。
大切なのは、「矯正」と「近視という病態のフォロー」を分けて考えることです。適応検査で眼底や緑内障の状態を確かめ、術後も定期的な眼底検査を続ける。この前提を持てるかどうかが、強度近視の視力回復手術で後悔しないための土台になります。手術の適応判断は、必ず眼科医の診察・適応検査を受けたうえで決めてください。
免責事項
※本記事は一般的な情報を整理した参考情報であり、診断・治療方針の判断は必ず眼科医にご相談ください。記載の適応度数・費用・検査内容は2026年7月時点の公開情報を参考にしており、最新条件は各クリニック公式サイト・日本眼科学会の情報でご確認ください。ICLは自由診療が中心で、効果・術後経過・合併症の有無には個人差があります。
参考・出典
- 日本眼科学会 屈折矯正手術のガイドライン(2019年)
- 日本眼科学会 目の病気「近視」
- 国税庁 タックスアンサー No.1122「医療費控除の対象となる医療費」Q3「眼科医に支払う治療費等」(令和7年4月1日現在法令等)

