ICLの医療費控除は「医師による診療または治療の対価」にあたるかで判断されます。国税庁が名指しで対象と示しているのはレーシックとオルソケラトロジーで、ICLの記載はありません。対象になる場合、両眼65万円・控除額55万円・所得税率20%なら合計約16万円が軽減される目安です(国税庁タックスアンサーNo.1120・令和7年4月1日現在法令等)。
この記事でわかること
- 国税庁が名指しで対象と示しているのはレーシックとオルソケラトロジーで、ICLの記載はない(可否は税務署で確認)
- 還付額は「控除額×(所得税率+住民税10%)」が目安で、税率で戻る額が変わる
- 対象になるのは手術費・適応検査・公共交通機関の通院費で、ガソリン代や診断書料は対象外
- 共働き・生計一の家族は医療費を合算でき、原則は所得税率が高い人がまとめて申告すると得
- 医療ローン払いは借入金で支払った年に全額が対象(金利・手数料は対象外)
公的情報源: 国税庁 タックスアンサー No.1120 医療費を支払ったとき(参照)/No.1122 医療費控除の対象となる医療費 Q3「眼科医に支払う治療費等」(参照・令和7年4月1日現在法令等)/質疑応答事例(所得税)「借入金で支払った医療費」(参照・令和7年8月1日現在の法令・通達等)/日本眼科学会「屈折矯正手術のガイドライン」(参照)
ICLは医療費控除の対象?対象になる条件を整理
先に結論です。ICLが医療費控除の対象になるかは、「医師による診療または治療の対価」にあたるかで決まります(所得税法第73条第2項・所得税法施行令第207条第1号)。国税庁が名指しで「対象となる」と示しているのはレーシック手術とオルソケラトロジーで、ICLを名指しした記載はありません(国税庁 タックスアンサー No.1122「医療費控除の対象となる医療費」Q3「眼科医に支払う治療費等」・令和7年4月1日現在法令等)。
医療費控除とは、1年間に支払った医療費が一定額を超えたとき、その超えた分だけ課税所得を減らせる所得税の制度です。控除で課税所得が下がるため、納めた所得税が戻り、翌年の住民税も軽くなります。
ICL(眼内コンタクトレンズ)とは、レンズを眼内に挿入して近視や乱視を矯正する手術です。医療費控除は保険が効くかどうかでは決まらないため、自由診療であること自体は対象外の理由になりません。判断の分かれ目は、あくまで視力を回復させる治療の対価といえるかどうかです。
国税庁が対象と明示している手術・していない手術
国税庁は、眼科で支払う費用を次のように整理しています。
- 対象となる(明示あり):視力回復レーザー手術(レーシック手術)/オルソケラトロジー治療(角膜矯正療法)
- 対象とならない(明示あり):日常生活の必要性で購入する近視・遠視用の眼鏡
- 記載がない:ICL(有水晶体眼内レンズ)
対象と示された理由は「眼の機能それ自体を医学的な方法で正常な状態に回復させるものであり、それに係る費用は、医師の診療または治療の対価と認められます」というものです(国税庁 タックスアンサー No.1122「医療費控除の対象となる医療費」Q3「眼科医に支払う治療費等」・令和7年4月1日現在法令等)。
ICLも同じく視力を回復させる手術ですが、国税庁が名指しで示した文書はありません。なお所得税基本通達73-4は「容姿を美化し、又は容ぼうを変えるなどのための費用は、医療費に該当しない」と定めており、美容目的の施術が対象外であることは通達で明確です。
近視矯正のICLは、日本眼科学会「屈折矯正手術のガイドライン」(2019年改訂)でも適応や術前検査の考え方が示された標準的な術式です。ただし税務上の可否はガイドラインでは決まりません。申告前に最寄りの税務署へ確認するのが確実です。
なお、ICLそのものの費用相場や適応条件はICLの費用と適応条件で整理しています。本記事は「支払った後、税金がどう戻るか」の実務に絞ります。
ICLの医療費控除はいくら戻る?還付額のモデルケース
先に結論です。ICLの医療費控除で戻る額は、「控除額 ×(所得税率+住民税10%)」でおおよそ計算できます。税率が高い人ほど戻る額が大きくなります。
まず控除額を出します。国税庁タックスアンサーNo.1120(2026年7月時点)の計算式は次のとおりです。
医療費控除額の計算式(国税庁No.1120・2026年7月時点)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 医療費控除額 | (1年間の医療費 − 保険金などの補てん)−(10万円 or 総所得金額等の5%の少ない方) |
| 差し引く額 | 総所得金額等が200万円以上は10万円/200万円未満は総所得の5% |
| 控除の上限 | 最高200万円 |
たとえば両眼65万円のICLを支払い、他に保険金の補てんがない場合、控除額は「65万円 − 10万円 = 55万円」です。この55万円が課税所得から引かれます。
戻る額は、この控除額に税率をかけて求めます。所得税は還付、住民税は翌年度の減額という二階建てになる点が重要です。

上の図は「両眼65万円・控除額55万円」の場合に戻る額を税率別に並べた例です。所得税率20%の人なら、所得税と翌年の住民税を合わせて約16万円が軽くなる計算になります。
ただしこれはモデルケースです。実際の税率は所得や他の控除で決まり、住民税の減額は翌年度の課税に反映されます。正確な金額は源泉徴収票と国税庁の申告書作成コーナーで確認してください。
ICLの医療費控除の対象になる費用・ならない費用
先に結論です。手術そのものが対象になる場合、対象は手術費だけではありません。適応検査費や公共交通機関の通院費も対象になります(国税庁タックスアンサーNo.1122「医療費控除の対象となる医療費」9(1)・令和7年4月1日現在法令等)。
一方で、同じ通院でも自家用車のガソリン代や駐車場代は対象外です。線引きを知らないと、対象になる費用を申告し忘れます。

対象になる費用
- ICLの手術費・レンズ代:治療のための本体費用
- 適応検査・術後検診の費用:手術に必要な検査・経過観察
- 公共交通機関の通院費:電車・バスの往復運賃(付き添いが必要な場合はその分も)
対象にならない費用
- 自家用車のガソリン代・駐車場代:公共交通機関以外の交通費は対象外
- 診断書などの文書料:治療に直接必要な費用とはみなされにくい
- 医療ローンの金利・手数料:医療費控除の対象は「診療又は治療…の対価」に限られるため対象外(所得税法第73条第2項)
保険金や給付金で補てんされた分は、医療費から差し引きます。所得税法第73条第1項が「保険金、損害賠償金その他これらに類するものにより補てんされる部分の金額を除く」と定めているためです。補てん額は「その給付の対象になった医療費」から引くのがルールで、他の医療費までは減らしません(所得税基本通達73-8)。
共働き・生計一なら誰が申告すると得か
先に結論です。医療費控除は生計を一にする家族の分を合算でき、原則は所得税率が高い人がまとめて申告すると戻る額が大きくなります(国税庁タックスアンサーNo.1120・2026年7月時点)。
「生計を一にする」とは、同じ家計で暮らしている状態を指します。共働きでも、家族のICL費用や他の医療費を1人にまとめて申告できます。

なぜ税率が高い人が得なのか
医療費控除は課税所得を減らす制度です。同じ控除額でも、税率が高い人ほど軽減される所得税が大きくなるため、夫婦のうち収入が多い人に寄せるのが基本です。
足切りの例外に注意
ただし例外があります。総所得金額等が200万円未満の人は、差し引く額が「10万円」ではなく「総所得の5%」になります。
- 所得が高い人:足切りは一律10万円。控除額が大きくなりやすい
- 所得が低い人(200万円未満):足切りが総所得の5%に下がるため、医療費が少なくても控除できる場合がある
医療費の総額が10万円をわずかに超える程度なら、あえて所得が低い側で申告した方が控除できるケースもあります。まずは合算し、両方の足切りで試算して有利な方を選びます。
医療ローン・分割払いで受けたICLの控除の扱い
先に結論です。医療ローンで支払っても医療費控除は使えます。国税庁の質疑応答事例「借入金で支払った医療費」は、「借入金で医療費を支払った年分の医療費控除の対象となります」と示しています(国税庁 質疑応答事例(所得税)「借入金で支払った医療費」・令和7年8月1日現在の法令・通達等)。
見落とされやすい点ですが、手元のお金で一括払いしていなくても、控除を受けられます。
ローン払いで押さえる3点
- 控除する年:分割の返済年ではなく、借入金で医療機関へ支払った年にまとめて対象になる
- 対象になる額:立て替えられた治療費の総額(=ICL本体の費用)
- 対象外の額:ローンの金利・手数料は「診療又は治療の対価」ではないため控除できない(所得税法第73条第2項)
つまり、年をまたいで返済していても、控除は「医療機関に支払われた年」に一度で計上します。未払いの医療費は現実に支払われるまで対象にならない(所得税基本通達73-2)一方、借入金による支払いは支払済みとして扱われる、という整理です。証明として、信販会社の契約書やクレジットの明細を保管しておきます。
分割の返済に合わせて毎年少しずつ控除する、という誤解をしやすい部分です。支払いのタイミングと控除の年がずれる点を覚えておくと、申告年を間違えません。
ICLの医療費控除の確定申告のやり方
先に結論です。ICLの医療費控除は、「医療費控除の明細書」を作って確定申告書と一緒に提出すれば受けられます。会社員でも自分で申告します。
年末調整では医療費控除は処理されません。給与所得者も、還付を受けるには自分で確定申告する必要があります。

手順とやり方
- 領収書・明細を集める:ICLの領収書、適応検査・術後検診の費用、公共交通機関の通院費のメモ
- 医療費控除の明細書を作る:国税庁の確定申告書等作成コーナーで金額を入力する(健康保険の医療費通知を使うと入力が省ける)
- 確定申告書を提出する:e-Taxならスマホやパソコンで完結、郵送や税務署持参でも可
- 還付・住民税減額を受ける:所得税の還付は提出後おおむね1〜2か月、住民税は翌年度の減額に反映
領収書は提出不要です。ただし国税庁は「確定申告期限等から5年を経過する日までの間、医療費の領収書の提示または提出を求める場合があります」としているため、5年間は手元に保管します(国税庁 タックスアンサー No.1120・令和7年4月1日現在法令等)。明細書に金額を記載するので、原本は手元に残します。
なお、確定申告をし忘れていてもさかのぼって還付申告できます。還付申告書は「その年の翌年1月1日から5年間提出することができます」(国税庁 タックスアンサー No.2030 還付申告・令和7年4月1日現在法令等)。ICLを受けた年に申告していなければ、期限後でも手続きは可能です。クリニックの評判や費用の比較はICLの評判で選ぶクリニック比較もあわせてご覧ください。
よくある質問(FAQ)
Q1:ICLの医療費控除はいくら戻りますか?
戻る額は「控除額 ×(所得税率+住民税10%)」が目安です。両眼65万円で控除額55万円・所得税率20%なら、所得税と翌年の住民税を合わせて約16万円が軽減される計算になります(モデルケース・2026年7月時点)。税率は所得や他の控除で変わるため、正確な額は源泉徴収票と国税庁の申告書作成コーナーで確認してください。
Q2:ICLは保険がきかないのに医療費控除の対象になりますか?
自由診療であること自体は、対象外の理由になりません。医療費控除は「医師による診療または治療の対価」かどうかで判断されます(所得税法第73条第2項・所得税法施行令第207条第1号)。ただし国税庁が名指しで対象と示しているのはレーシック手術とオルソケラトロジーで、ICLを名指しした記載はありません(国税庁タックスアンサーNo.1122 Q3「眼科医に支払う治療費等」・令和7年4月1日現在法令等)。個別の可否は最寄りの税務署にご確認ください。
Q3:医療ローンで払ったICLも医療費控除の対象ですか?
対象です。国税庁の質疑応答事例「借入金で支払った医療費」は、借入金で医療費を支払った年分の医療費控除の対象になると示しています(令和7年8月1日現在の法令・通達等)。分割の返済年ではありません。ただしローンの金利・手数料は「診療又は治療の対価」ではないため控除できません(所得税法第73条第2項)。契約書やクレジット明細を保管してください。
Q4:共働きです。夫婦どちらで申告すると得ですか?
医療費は生計を一にする家族で合算でき、原則は所得税率が高い人がまとめて申告すると戻る額が大きくなります。ただし所得200万円未満の人は足切りが総所得の5%に下がるため、医療費が少額なら低い側が有利な場合もあります。両方で試算して有利な方を選びます。
Q5:ICLを受けた年に申告し忘れました。まだ間に合いますか?
間に合います。還付申告書はその年の翌年1月1日から5年間提出できます(国税庁 タックスアンサー No.2030「還付申告」・令和7年4月1日現在法令等)。領収書や医療費の記録が残っていれば、後からでも手続きが可能です。
まとめ|ICLの医療費控除は「対象・税率・申告」で押さえる
- 国税庁が対象と明示しているのはレーシックとオルソケラトロジー。ICLは名指しの記載がなく税務署で要確認
- 還付額は控除額×(所得税率+住民税10%)が目安で、両眼65万円・税率20%なら約16万円が軽減
- 対象は手術費・適応検査・公共交通機関の通院費、ガソリン代・診断書料・ローン金利は対象外
- 共働きは合算して所得税率が高い人が申告(足切りの例外に注意)
- 医療ローンは支払った年に全額対象/還付申告は翌年1月1日から5年間できる
ICLの医療費控除は、「対象になるか・税率でいくら戻るか・どう申告するか」の3点で整理できます。このうち1点目は国税庁の公表資料だけでは決まりません。ICLを名指しした記載がないためです。
まずは領収書と通院費の記録を残し、家族の医療費と合算して有利な方で試算する。この順番で進めれば、確定申告のやり方に迷いません。ICLが控除の対象になるかどうかの最終判断は、必ず最寄りの税務署または税理士にご確認ください。
免責事項
※本記事は一般的な情報を整理した参考情報であり、税務上の判断・確定申告の手続きは最寄りの税務署または税理士にご確認ください。国税庁の公表資料にICL(有水晶体眼内レンズ)を名指しで医療費控除の対象とした記載はなく、本記事は所得税法第73条・所得税法施行令第207条の要件と国税庁が示した同種手術の取扱いを整理したものです。記載の計算例・税率は令和7年4月1日現在法令等の国税庁タックスアンサーをもとにしたモデルケースで、実際の還付額は所得・他の控除により異なります。ICLは自由診療が中心で、手術の適応判断・効果・術後経過には個人差があり、最終的な適応判断は必ず眼科医の診察・適応検査を受けてご判断ください。
参考・出典
- 国税庁 タックスアンサー No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)
- 国税庁 タックスアンサー No.1122 医療費控除の対象となる医療費(令和7年4月1日現在法令等)
- 国税庁 タックスアンサー No.1122 Q3「眼科医に支払う治療費等」(令和7年4月1日現在法令等)
- 国税庁 質疑応答事例(所得税)「借入金で支払った医療費」(令和7年8月1日現在の法令・通達等)
- 国税庁 タックスアンサー No.2030 還付申告(令和7年4月1日現在法令等)
- e-Gov法令検索 所得税法 第73条(医療費控除)(2026年8月12日時点の現行法令)
- 国税庁 所得税基本通達 法第73条《医療費控除》関係(73-1〜73-10)
- 日本眼科学会 屈折矯正手術のガイドライン(2019年)

