乱視はレーシック・ICLで治せるか|適応条件と費用を整理

「乱視が強くてコンタクトもメガネも煩わしい。手術で治せないだろうか」——そう考えて、レーシックやICLを調べ始める方は少なくありません。

結論から言えば、乱視は多くの場合レーシックでもICLでも矯正できます。ただし「どの乱視か」「どのくらい強いか」で、向く手術と適応外になるケースが変わります。

この記事では、乱視がレーシック・ICL(乱視用トーリックICL)でそれぞれどこまで矯正できるか、適応条件・適応外・費用相場・強度乱視の選び方を、公的情報とメーカー情報をもとに中立に整理します。

この記事でわかること

  • 乱視には「正乱視」と「不正乱視」があり、手術で矯正しやすいのは正乱視。不正乱視は適応外になりやすい
  • 矯正できる度数の目安は、レーシックで乱視6Dまで・ICL(トーリック)でおおむね4.0〜4.5D前後まで(数値はクリニック・機種で異なる)
  • 費用はレーシック両眼20〜40万円、ICL両眼45〜70万円前後。乱視用ICLは通常のICLに約10万円上乗せが目安
  • 強度乱視・角膜が薄い・円錐角膜傾向ならICL寄り、軽〜中等度で費用を抑えたいならレーシック寄りが一般的

情報源: 日本眼科学会「エキシマレーザー屈折矯正手術のガイドライン」(参照)/医薬品医療機器総合機構 PMDA(参照

先に結論を整理します

乱視は、メガネやコンタクトで矯正できる範囲のものなら、レーシック・ICLのどちらでも矯正できることが多いです。乱視専用に角度を合わせたレンズ(トーリックICL)や、レーザーで角膜カーブを整える方法があるためです。

ただし鍵になるのは度数より先に「乱視の種類」です。規則正しい歪みの正乱視は矯正しやすく、目のケガや病気で歪みが不規則になった不正乱視は、手術での結果が読みにくく適応外になりやすいのが実態です。

この記事の要点
  • 矯正の可否は「度数の大きさ」より先に、まず正乱視か不正乱視かで決まる
  • 正乱視なら、レーシック・ICLとも乱視矯正に対応できる。強度乱視・薄い角膜はICLが選択肢になりやすい
  • 費用はレーシックの方が安く、ICLは高いが取り出せる(可逆性)という違いがある
  • 最終的な適応は適応検査で決まる。両方扱う眼科での相談が選択肢を広げやすい

なお、効果や見え方の感じ方には個人差があり、適応の判断は必ず眼科専門医の診察によります。本記事は一般的な整理です。

目次

そもそも乱視とは|角膜乱視と水晶体乱視

最初に押さえたいのは、乱視は「ピントが1点に合わない状態」だという点です。手術選びの前提になるので、簡単に整理します。

正常な目では、角膜と水晶体を通った光が網膜の1点に集まります。ところが角膜や水晶体のカーブがラグビーボールのように方向で違うと、光が2点以上に分かれ、像が縦や横にぶれて見えます。これが乱視です。

乱視は「どこで生じているか」で大きく2つに分かれます。ここが手術選びに直結します。

種類原因の場所特徴
角膜乱視角膜(黒目)のカーブのゆがみ乱視の多くを占める。手術で扱いやすい
水晶体乱視(内乱視)水晶体のゆがみ角膜手術では矯正しにくい場合がある

角膜乱視は手術で扱いやすい

乱視の大部分は角膜のカーブの歪み(角膜乱視)によるものです。レーシックは角膜そのものを整えるので、角膜乱視と相性が良いのが特徴です。

ICLも、レンズに乱視を打ち消す度数を組み込む(トーリックICL)ことで、角膜乱視を矯正できます。

水晶体乱視は事前検査での見極めが要る

一方、水晶体のゆがみによる乱視(内乱視)が混じっていると、角膜だけを整えても乱視が残ることがあります。手術前の検査では、角膜の形状を測る検査(角膜形状解析)などで乱視の内訳を調べ、矯正後の見え方を予測します。

自分の乱視がどこ由来かは、自己判断できません。適応検査で内訳を確認することが、術後の「思ったより乱視が残った」を避ける第一歩です。

正乱視と不正乱視|適応を分ける最大の軸

度数の大小より先に確認したいのが、正乱視か不正乱視かです。ここが手術の適応・適応外を分ける最も大きな軸になります。

  1. 正乱視:歪みが規則正しい。メガネ・コンタクトで矯正できる→手術の適応になりやすい
  2. 不正乱視:歪みが不規則。一般のメガネで矯正しにくい→手術の適応外になりやすい

正乱視|手術で矯正しやすいタイプ

正乱視は、角膜のカーブの歪み方が一定方向で規則的なタイプです。多くの人の乱視はこちらに当てはまります。

メガネやコンタクトの乱視用レンズで矯正できる乱視は、おおむね正乱視です。レーシック・トーリックICLとも、この正乱視を矯正の対象としています。

不正乱視|適応外になりやすいタイプ

不正乱視は、過去のケガ・角膜の病気・円錐角膜などで角膜の表面が不規則に歪んだタイプです。一般的なメガネでは矯正しきれず、ハードコンタクトで補うことが多くなります。

不正乱視は、レーシックでもトーリックICLでも結果が予測しにくく、原則として適応外とされます。ただし円錐角膜のごく軽度な例では、角膜を削らないICLが「慎重実施」という形で検討される場合があります。判断は専門医によります。

適応の出発点
  • メガネ・乱視用コンタクトで視力が出る=正乱視の可能性が高く、手術の適応を検討しやすい
  • メガネで視力が出にくい・ハードコンタクトが必要=不正乱視の可能性があり、慎重な検査が必要

乱視はどこまで治せる?矯正できる度数の目安

「自分の乱視は強いけれど手術できるのか」は、検討段階で最も多い不安です。結論として、メガネやコンタクトで矯正できる乱視なら、多くは手術の対象範囲に入ります

そのうえで、レーシックとICLで矯正できる度数の目安には差があります。下の表は一般的な目安で、実際の上限はクリニック・使用機種で異なります。

乱視矯正の度数目安(レーシック・ICL)

手術乱視の矯正目安補足
レーシック乱視おおむね6Dまで学会ガイドラインで遠視・乱視は6Dを限度とする目安
ICL(トーリック)乱視おおむね4.0〜4.5D前後レンズの規格上限。クリニックにより5〜6D対応の説明もある

D(ディオプター)はレンズの矯正力を表す単位です。数値が大きいほど乱視が強いことを意味します。

レーシックの乱視矯正範囲

日本眼科学会のエキシマレーザー屈折矯正手術ガイドラインでは、適応の目安として遠視・乱視は6Dまでが示されています(日本眼科学会)。

レーシックは角膜のカーブをレーザーで直接整えるため、角膜乱視を矯正しやすい方法です。ただし矯正量が大きいほど角膜を多く削るため、角膜の厚みが足りないと矯正できる度数に制限がかかります。

ICL(トーリックICL)の乱視矯正範囲

トーリックICLは、近視矯正のレンズに乱視を打ち消す度数を加えたものです。STAAR Surgical社の乱視用レンズで、PMDAに登録された医療機器として使われています(PMDA)。

矯正できる乱視はおおむね4.0〜4.5D前後が規格上の目安とされます。角膜を削らないので、角膜が薄くレーシックが難しい強度の近視・乱視でも対応できるのが強みです。

「治る」の意味は正確に理解する

ここで補足したいのが、手術で乱視を矯正できても「一生乱視ゼロ」を約束するものではない点です。加齢で角膜や水晶体の状態が変われば、乱視が再び出ることもあります。

また術後にわずかな乱視が残る場合もありますが、多くは軽度で、保証期間内の追加矯正で対応できるケースが一般的です。「完全に消える」と過度に期待しすぎないことが、納得につながります。

レーシックとICL|乱視矯正での違いを比較

正乱視で適応がある前提で、レーシックとICLのどちらを選ぶかは、度数・角膜の厚み・費用・可逆性で考えます。それぞれ得意な領域が違います。

乱視矯正での比較(レーシック・ICL)

比較項目レーシックICL(トーリック)
手術方法角膜をレーザーで削り整える眼内に乱視用レンズを挿入
向く乱視・近視軽〜中等度中等度〜強度
角膜が薄い人不利になりやすい角膜を削らず対応しやすい
可逆性元に戻せないレンズを取り出せる
費用(両眼)20〜40万円前後45〜70万円前後
主な留意点ドライアイ・フラップレンズの回転(軸ずれ)・白内障

レーシックが向きやすいケース

軽度〜中等度の近視・乱視で、角膜の厚みに余裕があり、費用を抑えたい人はレーシックが選択肢になりやすいです。費用が比較的安く、手術時間も短いのが利点です。

一方、角膜を削るため元には戻せません。強度の近視・乱視や角膜が薄い人は、矯正しきれない・適応外になる場合があります。

ICL(トーリック)が向きやすいケース

強度の近視・乱視、角膜が薄い、円錐角膜の傾向がある人は、角膜を削らないICLが選択肢になりやすいです。レンズを取り出せる可逆性も、将来の白内障手術などに備えやすい点で安心材料になります。

費用は高めで、眼内に異物を入れる手術である以上、レンズの位置ずれ(回転)や長期の経過観察が前提になります。

乱視用ICLの「軸ずれ(回転)」を正しく理解する

トーリックICL特有の論点が、レンズの回転(軸ずれ)です。不安に感じやすい部分なので、数値を添えて中立に整理します。

トーリックICLは、乱視の角度に合わせてレンズを正しい向きで固定します。この向きがずれると、乱視の矯正効果が落ちます。各クリニックの報告では、1度の回転で矯正効果が約3%低下し、30度回転するとほぼ効果が失われるとされます。

回転・ずれが起こる確率

回転やずれが実際にどのくらい起こるかは、報告により幅があります。下の表は各クリニックで示されている目安です。

項目目安補足
再矯正が必要な大きな回転約0.2〜0.5%クリニックの実績報告による
位置調整が必要なケース0.3%前後あるクリニックの実績例
再手術(入れ替え)が必要約0.1〜0.6%報告により幅がある

多くは術後24時間以内に起こる軽度の回転で、自然に安定することもあります。大きくずれた場合は、レンズの向きを合わせ直す追加処置で対応します。

起こったときの対応と保証

ずれや回転が起きても、レンズの向きを調整する手術や入れ替えで対応できるのが一般的です。クリニックによっては一定期間の軸合わせ手術を保証に含めている場合があります。

契約前に、回転・度数の戻りに対する保証期間と条件を必ず確認しておきたいところです。手術後にどこまで無償で対応してもらえるかは、クリニックで差があります。

乱視矯正手術の費用相場と内訳

費用は手術選びの大きな判断材料です。乱視矯正の費用は、近視矯正に乱視対応分が上乗せされる構造になっています。

費用相場の目安(両眼)
  • レーシック:20〜40万円前後
  • ICL(近視のみ):45〜66万円前後
  • 乱視用ICL:通常のICLに約10万円上乗せが目安

乱視の度数が強いほど、ICLでは費用が上がる傾向があります。乱視度数が5D未満か5D以上かで料金区分を分けているクリニックもあり、強度乱視では70万円前後になる例もあります。

費用に含まれるもの・別途かかるもの

提示される金額に何が含まれるかは、クリニックで差があります。確認しておきたい項目を整理します。

確認項目チェックの観点
適応検査費手術費に含まれるか・別途か
術後検診費何回まで無料か
保証・再手術費度数の戻り・軸ずれの保証期間と条件
薬代・初診料別途かかるか

医療費控除の対象になる場合がある

レーシック・ICLは、視力回復を目的とした治療として医療費控除の対象になり得ます。年間の医療費が一定額を超えた場合、確定申告で所得控除を受けられる仕組みです。

対象になるかは個別の状況によります。詳しくは国税庁の情報を確認するか、税務署・税理士に相談してください(国税庁)。

乱視矯正手術が向く人・慎重な検討がすすめられる人

ここまでを踏まえ、乱視矯正手術が向きやすい人と、手術前にとくに慎重な相談がすすめられる人を整理します。いずれも最終判断は適応検査によります。

  • 正乱視で、メガネ・乱視用コンタクトで視力が出ている
  • 近視・乱視の度数が直近で安定している
  • 定期検診に通える環境がある
  • 強度乱視・薄い角膜でレーシックが難しい場合はICLも含めて検討できる

逆に、次のような場合は手術前に慎重な相談がすすめられます。

  • 不正乱視(ケガ・角膜の病気・円錐角膜)の疑いがある:適応外になりやすい
  • 近視・乱視が進行中の年代:度数が安定してからの判断もある
  • 強い目の乾燥・持病がある:手術方法の選択に影響する
  • 「一生乱視ゼロ」を保証だと考えている:加齢で再び乱視が出る可能性を理解しておきたい

自分の乱視の種類と度数、角膜の状態を理解して選ぶことが、後悔のない判断につながります。レーシック・ICLの両方を扱う眼科で適応検査を受けると、片方に偏らない比較がしやすくなります。

よくある質問

Q1:乱視はレーシックで治せますか?

正乱視であれば、レーシックで矯正できることが多いです。日本眼科学会のガイドラインでは、乱視はおおむね6Dまでが適応の目安とされています。ただし矯正量が多いほど角膜を削るため、角膜の厚みが足りないと矯正できる度数に制限がかかります。ケガや病気による不正乱視は、結果が予測しにくく適応外になりやすい点に注意が必要です。

Q2:ICLで乱視はどこまで矯正できますか?

乱視用のトーリックICLで矯正できます。矯正できる乱視はおおむね4.0〜4.5D前後が規格上の目安で、クリニックによっては5〜6D対応と説明される場合もあります。角膜を削らないため、角膜が薄くレーシックが難しい強度の近視・乱視でも対応しやすいのが特徴です。

Q3:乱視はレーシックとICLのどちらが良いですか?

一律の正解はなく、乱視・近視の度数と角膜の状態で変わります。軽〜中等度で費用を抑えたいならレーシック、強度乱視・薄い角膜・円錐角膜傾向ならICLが選択肢になりやすい傾向です。ICLはレンズを取り出せる可逆性があり、レーシックは費用が安いという違いもあります。両方扱う眼科での適応検査が判断の近道です。

Q4:乱視矯正手術の費用はどのくらいですか?

費用相場は、レーシックが両眼20〜40万円前後、ICLが両眼45〜70万円前後です。乱視用ICLは通常のICLに約10万円上乗せが目安で、乱視が強いほど費用が上がる傾向があります。適応検査費・術後検診費・保証費が含まれるかはクリニックで差があるため、契約前に総額を確認してください。視力回復目的の手術は医療費控除の対象になり得ます。

Q5:乱視用ICLは回転してずれませんか?

トーリックICLは乱視の角度に合わせて固定するため、回転すると矯正効果が落ちます。再矯正が必要な大きな回転は約0.2〜0.5%程度と報告されています。多くは術後早期の軽度な回転で、向きを合わせ直す追加処置で対応できます。回転や度数の戻りに対する保証期間と条件は、契約前に確認しておきたいところです。

Q6:手術しても乱視が残ることはありますか?

わずかに乱視が残る場合があります。ただし多くは軽度で、日常生活に支障が出にくい範囲です。残った乱視は、保証期間内の追加矯正で対応できるケースが一般的です。手術前の検査で乱視の内訳(角膜乱視・水晶体乱視)を調べ、術後の見え方を予測しておくことが、「思ったより残った」を避けるポイントになります。

Q7:不正乱視でも手術を受けられますか?

不正乱視は、角膜の歪みが不規則で結果が予測しにくいため、原則として適応外になりやすいです。ケガ・角膜の病気・円錐角膜などが原因のことが多く、一般的なメガネでは矯正しきれないのが特徴です。ごく軽度の円錐角膜では、角膜を削らないICLが慎重実施で検討される場合もありますが、判断は適応検査を経て専門医が行います。

まとめ|乱視は「種類」と「度数」で手術を選ぶ

この記事のまとめ
  • 乱視はまず正乱視か不正乱視かで適応が分かれる。正乱視は手術しやすく、不正乱視は適応外になりやすい
  • 矯正できる度数の目安はレーシックで乱視6Dまで・ICLでおおむね4.0〜4.5D前後(クリニック・機種で差)
  • 費用はレーシック20〜40万円・ICL45〜70万円前後(両眼)。乱視用ICLは約10万円上乗せが目安
  • 軽〜中等度・費用重視はレーシック、強度乱視・薄い角膜はICLが選択肢になりやすい
  • トーリックICLは軸ずれ(回転)がある。保証の期間・条件を契約前に確認する

乱視の手術選びは、「どこまで治るか」だけでなく「自分の乱視がどの種類で、どのくらい強いか」を理解することから始まります。角膜乱視か水晶体乱視か、正乱視か不正乱視か——これらは自己判断できないため、適応検査での確認が欠かせません。

レーシック・ICLの両方を扱う眼科で適応検査を受ければ、片方に偏らない比較がしやすくなります。費用・保証・将来の見通しまで含めて、納得できる説明を受けてから判断してください。

免責事項

※本記事は一般的な情報を整理した参考情報であり、診断・適応・治療方針の判断は必ず医療機関で受けてください。効果・安全性・経過には個人差があります。記載内容は執筆時点の一般的な情報に基づきます。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

眼科クリニックの受付スタッフとして6年、レーシック・ICLの術前カウンセリングサポートを担当してきた池田です。私は眼科医でも視能訓練士でもありません。ただ、手術を検討している患者さんが持つ「費用の見通しが立たない」「レーシックとICLの違いが結局わからない」「術後のリスクが怖い」という疑問を、300件以上に渡って現場で聞き続けてきました。

そして自分自身も、コンタクト歴15年でICLを検討し、適応検査を受けて費用・リスク・術後の生活変化を一から調べた経験があります。「受付として見てきた視点」と「検討者として調べた視点」、この両方があるからこそ書ける情報があると思っています。

当サイトでは、レーシックとICLの違い・費用相場・クリニック選びの判断軸を、公的情報と現場経験から整理しています。**手術の最終的な適応判断は、必ず眼科医の診察・適応検査を受けてご判断ください**。

目次